あるクリスマスの日、赤帽が姉を届けてくれた(1)
姉の発症については、
実はどのタイミングだったのかよくわからない。
姉が中学〜高校の頃には、ちょっとキレやすいというか、繊細過ぎて腫れ物のようになっていたが、両親も私も激しめの反抗期なんだと思っていた。
高校を卒業後、デザインの専門学校を中退した姉はしばらくの引きこもりの後、病院の看護助手、マッサージなど人を癒すというような職業に好んでついていた。
そんなある日、姉が家を出ると言い出した。
なんでも、就職した横浜市のマッサージ店の寮で一人暮らしを始めるというのだ。
当時、私は大学を卒業したにもかかわらずバイト生活で、姉と2人で実家近くのマンションに住んでいたため、小躍りして喜んだ。
やった!これで姉の小言から解放される!自由だ!
夏、父に手伝ってもらって姉は引越していった。
…そして、平穏な3ヶ月が過ぎ
クリスマスの日、突然赤帽が届けに来たのだ。
お届けものは姉だった。
姉は消え入るような声で怖い怖いと呟いていたが、どっちかというと届けた赤帽のおじさんの方がよっぽど気味の悪い思いをした事だろう。
とにかく私はガラクタだらけの家財道具と姉を受け取り、代わりに横浜からの送料を赤帽のおじさんに支払い、
そして、日中土方仕事をしに外出している父の代わりに、姉と母を車に乗せて市内の精神病院に連れて行くことになったのだった。